こんにちは、畑です。2020東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、国内外の観光客が大挙して来ることを前提に、さまざまな取り組みが行われてきました。決済においても店舗で「支払いは現金のみ」と言う状態では会計時のクレームやトラブルとなるため、日本ではインバウンド対応としてキャッシュレス化に本格的に取組んでいます。
しかしながら、海外から日本への渡航者数は新型コロナウィルスの影響等で減少している状況に加え、2020東京オリンピック・パラリンピック開催の延期を決定するなど、新型コロナウィルス感染拡大が世界的に続く「コロナショック」状態となり、暗いニュースばかりが流れています。
また、国民全体が外出を控えるなど消費行動の減少も、日本経済全体に大きな影響を与えています。これらが終息した後もしばらくは、ボディブローのように日本経済低迷に苦しむことになるでしょう。
せっかく国をあげて取り組んで来ているキャッシュレス・ポイント還元事業も、「キャッシュレス導入の効果とは?」「キャッシュレス決済は現金より衛生面でも良い!」などと言っている場合ではない危機的な状況となり、一日も早い終息を祈るばかりです。
このような環境の中、人口一極集中が続く東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)と、人口減少に歯止めがかからない地域における共通課題である「人手不足」は、いよいよ「待ったなし!」の状態に突入したと言えます。
それぞれの地域において、どのようにキャッシュレス化に取り組めば、効果的な業務省力化や人件費削減等の改善が可能か?そして人手不足問題に立ち向かうことが出来るか?について今回少し考えてみたいと思います。
参照元:https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00385/
東京圏でも労働力不足は深刻化
現在は人材不足や教育面の問題から、地域のみならず、東京圏の企業においてでさえ人材確保の難易度が増している傾向にあるようです。各種予測情報によると人手不足とともに、時給単価も上昇傾向にあり2025年以降時給2,000円を超えるという予測もあります。
出所:2020~2030年は本研究の推計結果。2017年実績は厚生労働省、雇用動向調査(未充足求人数-人手不足数)、賃金構造基本統計調査(所定内賃金、所定内実労働時間)、消費者物価指数
参照元:https://www.bcnretail.com/market/detail/20181024_90265.html
皆さんもきっとコンビニや牛丼屋に行った際、日本人以外の店員が注文・会計対応をしてくれた、といった経験が増えてきていると思います。
ある就職斡旋会社の方のお話しでは、現在「日本の大学生がアルバイトをしなくなっている」傾向にあるそうで、アルバイトをしても平日9時から17時のアルバイトを選ぶことが多く、夜や土日は休みたい、自由な時間として楽しみたいと思う学生が多いようです。「学校へいつ行っているの?」と問いただしたくなりますが、このような経験値の学生がこれから社会人として企業などに就職するわけですから、受入企業や対応する先輩社会人の方々もいろいろと配慮することが多くなりそうです。今まで大学生アルバイトが夜間・休日の労働力を担っていたお店の、労働力不足分を外国人労働者がカバーしているというのが実態のようです。
このような環境になったことを、ここで分析するテーマではありませんが、我々大人の責任なのかもしれません。
決済関連業務における効率化・省力化
社会情勢として、人間が行っている仕事の一部はいずれシステム・機械化される事は各所で言われてきていますが、次の傾向は事実として認識しておかなければなりません。
現状を放置すると「現場が回らなくなる」ことは言うまでもなく、いかに労働力不足を「ITで支援」できるかが喫緊の課題になっています。
特に、飲食業界はIT化が進んでいないと言われる業界の一つです。また、労働生産性が低いことについても問題になっており、働き方改革とともにITを利用した生産性の向上が国策となっています。
また、飲食業界は「超分散市場」とも言われており、全国に約60万店舗が存在する業界において大手飲食チェーンでも数千店舗のシェア程度にとどまっており、大手企業の寡占が進んでいない市場構造になっています。そのため、企業規模を問わずデジタル化、IT化に向けたビジネスチャンスが豊富にあるマーケットでもあります。
ITを利用した業務効率化として、例えば注文する際に店員を呼ばずに自分のスマートフォンでオーダーが出来たり、会計の際にレジに行かずに自分のテーブルで支払い出来るサービスの導入が考えられます。これにより、それぞれの作業にかかっていた店員のオペレーション負荷を減らすことができるだけでなく、本来手厚くしたいサービスへパワーシフトすることも出来、全体の最適化を図ることが可能になります。
店舗における人手不足とは対照的に、デリバリーサービスは急速に拡大しています。元々は買い物難民を救済する方策として地域では注目されていましたが、新型コロナウィルスの影響により店舗へ行かない「巣ごもり消費」など、出前・デリバリー依頼をする人が急増して思わぬ追い風になり、加速度的に拡大している状態にあります。
地域と東京圏での取り組みの違い
さて、今回のテーマである人手不足対応については、地域の実態は東京圏とは比較にならないほど日常生活に支障が出始めているのが現状です。私は、「地方」と言う表現自体が個人的には非常に違和感を覚えており、予算だけは地方に配布される中央集権の象徴的なものが「地方創生」と言う表現になっている気がします。地方創生と言うならば「中央創生」も同時に着手すべき話しだと思います。
ある地域では、人手不足によりバスの運転手を確保する事が難しく、小学校の通学バスでさえ運行ができません。よって小学生のいる家庭では前日に「タクシー配車の予約」をする必要があり、予約出来ない場合は通学ができないそうです。小学生の通学用としての予約手配と、地域住民の移動手段としてのタクシー予約が毎日奪い合いの状態で、東京圏では想像も出来ないことが地域では起きているのです。
東京圏の企業の方々と会話をする中でよく、「東京圏のサービスをASPのように共同利用型サービスで地域へ持ち込むことで全体シェア獲得や採算ラインを重視した企業がいる」という話や、「そもそも地域は人口が少ないため、検討対象外だ」と、割り切っている話もよく耳にします。地域においては、一極集中の東京圏のような人口過密地域ならではの「大量消費」や「大量トランザクション」は発生せず、提供されるべきソリューション自体を地域向けに投資コストを抑えて、地元地域にデータやお金が還流・還元できる仕組みが求められています。せっかく地域に導入した仕組みで、データやお金が東京圏へ流出していては大問題です。
例えばIC交通乗車券をそのまま地域の市町村・地域のバス・無人駅までにインフラ提供することが、地域の社会課題解決に本当になるのでしょうか?これに対してQR決済を導入すれば人手不足が解消するといった安易な発想では非常に困りますが、地域と東京圏では全くことなる環境があることを我々は理解しなければならないのです。
具体的な課題解決の方策を地域目線で考え、その解決策としてシステムが必要であれば良いのですが、すぐにシステムの話しやコンサルティングの話しになってしまい、解決手段が限定的になっていることが多く見受けられます。大規模プロモーションや破格のポイント還元キャンペーンばかりが注目され、本当に困っている課題が置き去りのままになっています。東京圏の競争・消耗戦は短期目線の話です。中長期目線で地域課題解決が出来る企業が本当の意味でこれから評価され、真価が問われて来るのではないでしょうか。TISも視野を広げ、引き続き社会課題解決に向けて取り組んでいきたいと思います。
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