コラム Column

新規事業の立ち上げと、イノベーションの姿とは

ひらめき

こんにちは、畑です。
今回は、私が公立会津大学にて講義を担当した内容(※1)より一部抜粋し、「新規事業の立ち上げ」についてご紹介します。TIS社内における新規事業の立ち上げを進めていく中での葛藤や思い、進めていく上での苦労話しや注力した点を中心に記載しています。

また、コロナ禍において企業における働き方が見直されている中、大手企業における新規事業への取り組む姿として参考になれば幸いです。
※1公立会津大学 ベンチャー基本コース各論Ⅱ(2019年11月21日実施教材より) 「大企業における新規事業の立ち上げ・マネタイズ ~決済ビジネスに強いTIS社が立ち上げた、決済サービス新規事業(QR事業)の取り組みについて~」

SIerから脱却し、サービス事業会社を目指した背景とは

TISは、約50年近くにわたり、多くの金融・カード会社様に向けた基幹システム・周辺システムの開発・運用を行ってきた実績があります。今まではお客様の戦略に基づき、要件を伺い、システム構築を請け負ってきました。

しかし、近年ではネット環境の進歩やICT技術の向上などにより、ビジネスを展開する会社自らが新しいサービスやアプリを開発し、直接サービスを提供するようになりました。新しいサービスが市場に投入されるスピードも日々進化しているのが現状です。決済業界も急激に変化し、顧客から依頼を受けたものをシステム開発している状態では、市場への投入が遅くなります。自社で直接システム開発からサービス提供が出来る市場へと変化している事に、TISは危機感を感じるようになりました。

このような市場の変化において、TIS自らが市場のフロントに立つことで他社に先駆け市場に参入し、請負型のシステム開発から自らが戦略を企画立案・商品化し、サービスを直接提供するサービス事業会社になることを目指したのです。

加盟店に直接「QR決済アプリサービス」を提供したことは「初」

TISのライバルは「現金」とし、キャッシュレス化を推奨する1つの手段として「QR決済」サービスを立ち上げ、今まではSIerとして決済事業会社の戦略や営業企画に応じてシステム開発を請け負ってきました。

しかし、【図1】にあるとおり、TIS自らが決済手段を導入・利用する加盟店(お店)に対し、直接サービスを提供する「QR決済アプリ(加盟店向けQR決済ゲートウェイサービス)」を開始しました。加盟店であるお客様と直接向き合い、決済サービス導入後の「お客様の声」もダイレクトにヒヤリングを行う事でよりスピーディに対応でき、お客様に寄り添った関係を築く事ができるのです。
本サービスについては、以下URL先をご覧ください。
https://service.paycierge.com/qr/

全体図

TIS、そしてチームメンバーとしての挑戦

クレジットは「欧米」で始まり、日本生まれのQR技術は「中国」でQR決済として爆発的に活用されているキャッシュレスツールの一つです。それぞれ国や文化によってメインで利用される決済手段は異なります。日本はいまだに現金利用が多いですが、その中でもクレジット利用の割合が高く、QR決済は伸びないのでは?と思われてきました。そういった状況の中でQR決済サービスを世の中に広める為、更には自らがサービス事業会社になるべく挑戦が始まったのです。
最初は私を含めてチームメンバー3名からのスタートでした。
挑戦その1

・マーケットのフロントに立つこと(SI営業からサービス提供営業へシフト)
 顧客の戦略に基づきシステム構築するのではなく、自らがビジネス戦略を策定し、他社より先にマーケットをリードすること

挑戦その2

・ビジネスにシステムを合わせること
 お客様のご要望をシステム化するやり方から、自らのビジネス戦略にあったシステムを用意する方針への転換をすること

挑戦その3

・トランスフォーメーションを実現する組織になること
SIerとして長年培ってきた社内マネージメントスタイルから、サービス提供事業会社としてのKPI、PDCAなど新旧入り乱れての変革をし続けること

挑戦を始めた頃は、SIerとして長年提供、販売しているため、SIに重きを置いたマネジメント管理の実態を含め、いくつもの課題にぶつかりました。

課題1
・「システムの話が先行してしまう」  システムの要件確認・仕様書確認や見積取得の話が先行してしまう
→解決策:一番重要な誰に、どのくらい(マーケット、規模等)、利益配分などビジネススキーム の協議を最初に行い、システム開発の話を最後にする
課題2
・「個別要件や要望に振り回されてしまう」  顧客要望に振り回されてしまう
 →解決策:折衝相手に「要件」を聞き、自分たちが提供すべき「標準サービス」・「標準機能」 とは何か?市場の課題を理解する

これらの課題に対しても1つひとつ解決しながら事業を進めていきました。

イノベーションを起こす上で重要な事とは

TISがこのQR決済市場における「フロントランナー」になる為、従来の要件を伺う請負ではなく、自ら戦略的な「ビジネスモデル」の考案、市場向けの「標準サービス」とは何かを確立し、それに向けて真っ先に取り組んで行く必要がありました。今日まで試行錯誤を繰り返して取り組んできた事業ですが、イノベーションを起こす上で大切にしている事を2つだけココでは紹介します。

■汗のかきかたを間違えない 

やったことのないもの(新規事業)を探す前に、目の前の課題に向き合うこと。  その課題を「自社の何」と「外部の何」を使って解決すればいいのか、ということを常に 繰り返し問い続けることが重要です。

■現場責任者の情熱が必要

 「このような(理想の)社会になるためには」という課題定義(愚痴や評論だけはダメ)をする必要  があり、「こんな便利なサービスが絶対にほしい」と情熱を注げることが出来る人になること。TISの場合は「事業オーナー」と言う立ち位置で取り組んでいますが、「世界でこの分野について自分が一番考えており、且つ一番詳しい!」という自負が非常に重要なことだと思います。

また、ビジネスというものは決して一人では成り立ちません。どれだけ多くの人と繋がりを持てるか=ネットワークづくり、ともに切磋琢磨できる「仲間づくり」が重要です。自立自走型のチームづくり、個人の役割や組織を超え、組織からの指示がなくとも「あるべき姿を自立して追求できる」チームや集団が組成出来ればこれに勝るものはないと私は考えます。今後は人財育成にも力を注いでいければと思っています。

これからの会社は、自己実現のプラットフォーム!?

このように新規事業ビジネスに取り組んで行く中で、仕事を楽しみながら自分も成長し、その結果会社が成長して行くことが一番の理想です。そして、自分が実現したい「夢」や、与えられた仕事に対する「Vision」とは何かを明確に自分の言葉で言える事がやはり基本のような気がします。
コロナ禍において「在宅勤務」、「ネット上での購買が増えた」など新しい働き方と生活様式が求められています。

今までの会社は【図2】にあるような会社の傘に守られていた看板営業・組織ピラミッド・終身雇用でした。これからの会社は「自己実現のプラットフォーム」へと変化し、会社自体も時代に合わせてデジタルトランスフォーメーションし続けることが、生き残りのキーポイントなのかもしれません。
自己紹介する際、会社名だけで挨拶するだけではなく「このような社会にしたい!と思っています」「〇〇の事業を立上げました」「目標は〇〇です」といった自分の思い、目標や成果、そして自分の役割や価値を明確に伝える事ができる人が増える事を望んでいます。
このような人達をチームとして持てることが、魅力ある企業として学生からも注目されるのではないでしょうか。

組織

このようなキャッシュレス社会を通じて挑戦を続けるTISですが、詳しく話しを聞いてみたい、と思われた方や興味ある方はご連絡頂ければ幸いです。ここで今回ご紹介出来なかった失敗談や苦労話しも別途機会あればご紹介したいと思います。
まだまだ変革、現在進行形ではありますが、社会課題に寄り添い、より良い解決策を皆さんと一緒に考え実行できるよう精進して参りますので、今後もTISにご期待ください。

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